発酵腸活とは
1.便と対話する
「便」は単なる排泄物ではなく、とても大事な情報を日々伝えてくれる存在です。「腸」からのお便りである「便」を毎日観察すれば、腸内環境の状態がわかります。
「便」の80%は水分で、残りは食べカスが7%、剥がれた腸粘膜などが7%、腸内細菌とその死骸が6%混ざって排出されます。腸粘膜は腸の内部の表面にある膜で食物を栄養源として、外敵の侵入を防いだり栄養の吸収を助けたりしています。通常、腸粘膜は2~5日で、削れながら再生し、腸内細菌と一緒に「便」となって排出されます。
この新陳代謝が正しく行われるためには、腸内環境のバランスが整っていることや、腸内細菌の栄養源となるエサが必要となってきます。腸内細菌のバランスが崩れると、新しい細胞の誕生が間に合わなかったり、正しく機能しなかったりして、腸壁に穴があき、外敵や異物が侵入しやすくなります。
いい腸内環境を見極める「便」の存在

「便」の見分け方
(ブリストルスケール)
自分のあてはまる「便」の状況が、今のあなたの腸の状況を物語っています。ポイントは4つ。色・形・量・ニオイです。
理想の出かたは、力まないのにストーンとでる。練り歯磨きくらいの軟らかさ、または、バナナくらいの硬さ。色は黄色~黄褐色。腸内細菌叢が良好な状態であれば、ニオイは強くありません。
自分の平熱を知るように、いつもの「便」の状態を把握し、体調の変化を感じながら、理想のうんちを求めて「便」をデザインしてみてください。

2.菌の棲みかを荒らさない
腸活で一番大事なことは、「菌の棲みか」である「腸」を荒らさないこと。それは「腸」の住人である菌の嫌いなものを食べないことです。
長年腸活をしているのに思うような結果が出てない人は、大抵ここが抜けている人が多いです。要するに、「腸」を荒らしながら腸活をしているのです。どれほど「腸」に良いものを食べたとしても、同じように「腸」に悪いものを食べていては、「腸」はよくなりません。

3.菌の多様性を増やす
これまで、口から入った食べ物を単独の腸内細菌が分解して栄養に変換すると考えられていました。しかし、腸内細菌の多くは単独ではなく、分業制で働いています。
腸内には100兆個の腸内細菌が棲んでいて、それぞれが腸内で、コロニーを形成し、マイクロバイオーム(腸内細菌叢)が成り立っています。
人間が口から食べたものは、その中の栄養素が小腸で消化・吸収され、未消化のもの(=一部の食物繊維)が大腸まで届きます。そして大腸まで届いた食物繊維を、複数の細菌がリレーのようにバトンをつなぎ、少しずつ形を変えながら、わたしたちの体によい影響を与えてくれる「宝=短鎖脂肪酸」を生み出してくれています。

せっかく良質な食事をしていても、例えば、第一走者の「糖化菌」が不在の場合、2番手以降の菌が働きにくくなり、リレーが成立せずに分解不足になってしまいます。
それぞれの細菌が協力し合いながら、バトンをつなぎ、それぞれの役割で働くので、腸内細菌の種類が多いほど消化できる栄養の種類も増えて、消化吸収能力も高まり、食物から得られるエネルギーを効率的に使えるようになります。
4.菌の数を増やす
人は生まれてくるとき、母親の胎内で無菌状態で守られ、出産とともにたくさんの細菌と接触し、生後3年前後で腸内細菌の組成が決まると言われています。
その後、有用菌を摂取しても定着するのは難しいと言われていますが、せっかく定住している菌も、偏った食生活を続けていれば栄養不足で菌の数が減ってしまいます。
また、腸内細菌叢を形成している腸内細菌は、有用菌2:日和見菌7:有害菌1のバランスで保ち整うことによって、わたしたちの体は健康を保つことができます。
腸内細菌叢では常に細菌たちが勢力争いをしていて、食生活等の様々な影響により、有害菌が優勢になると、有害物質を生成して、体に悪影響をもたらします。
逆に有害菌がいなくなると、有用菌は働かなくなってしまいます。2:7:1のバランスを保つことで、日和見菌も有害菌も体によい働きをしてくれるようになります。

一種類の有用菌だけが増えたり、悪玉菌が全くいなくなることは、多様性が低くなり、「腸」ににとってはよいことではありません。理想的な腸内環境とは、腸内に多種類の細菌がたくさんいるからこそ、お互いに助け合うことができて、身体の様々なアクシデントや要求に応えることができるのです。
いかに有用菌優位の状態に数を増やし、バランスを保つことが重要なのです。そして、多様な多くの菌を継続的に摂取することにより、腸内に一定数留まり、わたしたちにとって良い働きをしてくれます。
5.多様な菌のエサを摂る
菌の多様性と数を増やすためには、有用菌のエサとなる食物繊維を積極的に摂る必要があります。
食物繊維は、ピンポイントに特定の菌を増やすのではなく、持っている腸内細菌の中で、有用な菌を増やし、その人の持っている、いい腸内細菌を作ってくれる重要な栄養素です。
腸内細菌は、消化できずに運ばれてきた食物繊維を分解(発酵)してエサにして、有用菌が増殖し、「短鎖脂肪酸」を増やしてくれます。その「短鎖脂肪酸」は、腸粘膜の栄養源となり、悪用菌の増殖を抑える等、様々な良い効果をわたしたちの体にもたらしてくれます。

また、腸内細菌に多様性が大事であるように、腸内細菌に必要な食物繊維を多様な種類を摂ることで、偏った腸内細菌が増えることなく、腸内細菌叢のバランスが保たれます。
食物繊維によって、菌を機能(発酵)させることで生まれる「宝(短鎖脂肪酸)」の存在。この「宝」こそが、わたしたちの体を健康に導くのです。